3年かかったトランザム

大味だからこそ食指が動いた大滝の1/12トランザム 
大学生になった私はオーケストラの方にのめり込んでしまい、プラモはほとんど手付かずでした。下宿生活を始めて道具などもほとんどなく、休みに実家に帰ったとき少し手をつけるぐらいです。そのためこの大滝1/12トランザムは完成までに3年も(製作開始1973年、完成1976年)かかってしまいました。

今は無き大滝という会社、メーカーとしては古く、私がプラモを作り始めたときはすでに大手の方だったと思います。また、ラジコンでもタミヤが電動ポルシェ934を作ると、すぐこのトランザムと同じ1/12シリーズのBMWで追随するなど(シャーシは完全にパクリだったが)それなりにやってきた会社です。

大滝の作風は正直言って「大味」と言うべきか・・・。「ここがすごい」と言える所の少ない会社だった気がいたします。この12分の1シリーズも、タミヤに比べるとあまり作り込んではいなく、ラフな印象でした。

ではなぜ、このキットを作る気になったのか?それはこのキットのエンジン部分にモーターが仕込まれ、その動力をプロペラシャフト(ユニバーサルが2ヵ所ある)が伝え、しかもデファレンシャルは実車と同じように差動するという魅力を持っていたからです。そう、タミヤはもう走ることをやめてしまっていました!

また、大味なところがまた意欲をそそると言うか、これを素材にどこまで作りこんでいけるかと言う楽しみもありました。

 

ノートにやりたいことを列挙

コンセプトは「作りこみ」と決めました。 ではどこに手をつけるかを考えるために、一冊のノートにやりたいことを書きとめ、実行していきました。

・サスペンションはきっちりと、しかもアメ車らしくふにゃふにゃに動くようにしたーい。
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ここは、新しく作りなおしました。特にリアは何枚も板を重ねてリーフスプリングを再現しました。

・スイッチを入れるとエンジン(モーター)だけが動き、セレクターレバーを動かすと動き出すように、クラッチ機構を設けたーい。
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・かなりの難工事ですが、成功しました!

・ボンネットは通常ロックされており、レバーを引くとギーっと跳ね上がるようにしたーい。
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ロック機構は成功しましたが、跳ね上がりはうまく行きませんでした。

・内装は床にフェルト、天井はレザー貼りにしたーい。
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成功しました。

・トランクはきちんと作りこみたーい。
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キットはバッテリーを入れる関係で、トランクは上げ底になっていました。そこで電池ケースを自作し、トランクを開けてカセット式にセットすることにしました。電池ケースを入れないときはトランクはがらがらです。もちろん内部も仕上げました。

・ボンネットやトランクカバーの裏に溶接されている補強のプレス板を再現したーい。
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プラ板でそれなりに再現しました。

・室内灯やメーターライトなど、あらゆるものを点灯させたーい。
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メーターライトは透過式にしたかったのですが、工作方法を色々考えたものの、うまく行きませんんでした。室内灯もスケールを損なわないムギ球がなく、実現しませんでした(今なら小型の発光ダイオードで何とかなるでしょう)。

 

この他細かいことを書くと切りがありませんが、そのようにして完成したのが写真のトランザムです。相変わらず見た目はフツーですが、プラモ好きに見せるとけっこう喜んでくれます。

ちなみに購入時のキット価格は3000円でしたが、完成までには約2万円の費用がかかっています。ほとんどがピースコンヤング88のボンベ(一本550円だったが、そう多くは塗れない)と塗料代です。ボディー色を缶スプレーではなく、自分で調合したので、高くなりました。

 

なお、この作品は2002年に大修理を行いました。30年も経ちますとあちこちが痛んでおり、走行や点灯もできない状態だったからです。写真は全て修理後のものに差し替えました(修理中の写真は工作室をご覧ください)。

修理をしながら、当時(20才前後)あった楽しかったこと、恥ずかしかったことなども思い出され、感慨深いものがありました。

今のプラモはとても精密になり、細かいところまで実車を彷彿とさせる仕上がりになっています。また、マニアはそうでないと許さない雰囲気もあります。

このキットはタミヤなどから見ればかなりラフと言えますが、あらためて修理を行いながら「プラモってこれでいいんじゃないのかな。細かいことをガタガタ言って何になる。」とも感じています。
また、模型に「教材」という要素があるとしたら、エンジンの中にモーターが仕込んであり、実車と同じようなしくみで動くこのキットは最高の教材と言えます。。

子供の頃から動くプラモを楽しんでいた私にとって、このキットには一つの到達点とも言えるゴージャスさ、デラックスさがありました。まさにプラモの「王道」・・・。