潜水艦大研究−1

潜水艦は自動浮沈が命
潜水艦はプラモ好き少年にとって必須のアイテムでした。

潜水艦なる兵器(潜水艦と言う乗り物、開発当初から現在まで、ほとんど兵器以外には使われない、寂しい機械です)、子供たちはなぜその模型に夢中になれたかを考えてみますと私は大きく二つの理由があったのではないかと思います。

・小沢さとるの「サブマリン707」あるいは「青の6号」が決定的な影響を与えた。
  
・・・潜水艦は少年マンガ雑誌のグラビア、あるいは映画などでももちろん紹介されていたでしょう。また昭和30年代はまだ戦争の記憶が色濃く残っており、プラモデルの開発者たちには身近な存在だったのでしょう。しかし決定的とも言える要因は、やはり「サブマリン707(1963年から少年サンデーに連載)」の手に汗握る活躍でしょう。メカデザインを当時あれだけ魅力的に描いたマンガは歴史に残ります。

(※若い人は傷痍軍人さんって判りますか?私が子供の時は吉祥寺の商店街でよく見かけました。職業軍人だった父にはとてもつらい光景だったでしょう。一緒に歩いていても、その表情でわかりました。)

・自動浮沈という魅力的なメカが子供たちを魅了した。
  
・・・自動浮沈は、つまり動きが3次元であるということです。

当時の私の家の周りには井の頭公園など潜水艦で遊べる場所がありました。学校のプールでも遊びました。銭湯にも持っていきました。グリスが溶けてお湯の上に浮いてきましたが、大人は誰もそれを「邪魔だ」とか「汚い」とは言いませんでした・・・。

それでは当時の潜水艦の自動浮沈メカを分析してみましょう。

その1 固定抵抗舵タイプ・・・日模の伊号潜水艦1/400(取扱説明書)
ごく初期の自動浮沈メカです。抵抗蛇なるものを立てると、潜航した時これが抵抗となり、再び頭を持ち上げます。「特許自動浮沈式」だそうですが、実際にはぴょこたんぴょこたんした動きで、お世辞にもうまく動いたとは言えませんでした。

このプラモは、私がはじめて買ってもらった(昭和36年8月17日)記念すべき製品です。

その2 機械メカタイプ
最初にお断りですが、私はこの機械メカタイプの潜水艦は作っていません。それは、「どう見てもうまく動きそうもなかった」ことと「このタイプは高かったので、手が出なかった。」からです。

右のハリバット(雑誌広告)東宝模型工業株式会社(茨城県古河市)製で価格は何と750円。一方おなじみイッコーモケイマックス(雑誌広告)は600円と、どちらも小学生の私には到底手が届く値段ではありませんでした。

ハリバットは模型屋の奥まった上の方に飾ってありました。中がどうなっているのかは知りません。おそらく歯車による減速装置があり、水平翼を周期的に上下させて自動浮沈を行うものと思われます。

このメカは本質安全とは言えない機構です。 なぜなら、セッティングを間違えたり、自動浮沈装置が故障した場合、「もぐったり、浮いたり」して進むはずの潜水艦が「もぐったり、沈んだり」して進むことで、回収不能になる恐れがあるからです。

水のプラモ、特に潜水艦は非常にリスキーなおもちゃで、冬のプールや池で遊ぶ時は、万一の沈没・回収不能がつき物です。その意味でも私にはこの手の仕組みは手が出せなかった面もあります。

 


ハリバットに関する証言を、「そのうち何か作ります・・・」謎だ!OHaraさんからいただきました(2002/3/20)。  

「年齢的に、電動士さんにしか解らない話かもしれませんが、東宝の潜水艦プラモデル、ハリバットは、二度作ってます。
最近にな って、イマイのサンダーボーイ同様、元ネタの模型があって、その模倣品だと知りました。サンダーボーイと同様に少し小さいら しいです。 

自動浮沈の構造は、推進の動力から、ウオームギヤが噛ませてあって、そこからカムだったか、長いロッドで前の潜舵を動かす構造だったと思います。 
モーターから、スクリュー2軸に分ける構造も、金属のギヤボックスなどでなく、船体のモールドへ直 接支持されるので、当時の精度ではかなり動力的にロスがありそうな感じ、55モーターで無理やりガー!っと回してたと思います。 
ギヤがメッキもなく真鍮のまま、本体がスチロール樹脂、グレー成形。

レギュラスミサイルや潜舵は、ポリエチレン製?赤の成形でした。 
このポリエチレン製だと思われるパーツは、段々こすれて端が毛羽立ってきて白くなって、特に、格納庫から出したりしまったりして、レギュラスミサイルはボロボロになっていきました。 潜舵が前にあって、動力も前のジュニアCや、潜蛇が後ろで動力も後ろのマックスに比べると、自動浮沈の構造は頼りない感じで、2度ともまともに動くように出来た記憶無しです。

当時のイ マイのプラモは子供でも、ギミックが確実に動くように出来ていたのはさすがだと思いますね。」

 

イマイのサブマリン707ジュニア(※雑誌広告 実際の販売価格は450円)も、機械式です。

上記の2機種は誰かが作っていたとか、動いているのを見たとかの記憶もありませんが、サブマリン707はマンガで人気だったこともあり、実物はどこかの中学生のお兄さんが持ち込んだのを池で目撃しました。
 

いい音を出してフロントのスクリューが回り、動き出した707ジュニア。

そのまま浮くこともなく「まっさかさま」に井の頭公園の湖底に消えていきました。

(大和とPT-109については前のページを参照してください)


2008年10月追記

突然こんなメールをいただきました。ご本人の許可をいただき、一部抜粋してお伝えします。

「あまりにも懐かしい話が書いてあるのでメールをいたしました。

私も約40年位前、買って作ったばかりのサブンマリン707ジュニアを勇んで持ち込み、自動浮沈がうまくいかず、公園駅に近い浮島のある小さい池で浮上しませんでした。(自己ミスかと思い今まで若干トラウマぎみ)

過去に多少の人には笑い話として話しましたが、今では忘れかけていました。偶然このページを拝見し、同じようなこともあったのかと内心びっくりしております。

もしかして私たちの行動を見ていらっしゃたのかも。

あの時は薄覚えですが友人と他の遊んでいる人たちと多少探しましたが、池なのですぐ諦めました。あの時性能知識が多少でもあれば池では試さなかったと思います。

人生に似たようなことは大人になってもありますが、40年位前のことを今でも覚えているということは、小学生の自分にはかなりのショックだったように思います。」

井の頭公園池でサブマリン707Jr行方不明の男

 

 

まさか!と思い「707Jr行方不明の男」さんとは何度かやり取りさせていただきましたが、残念ながら年齢が私より三つほど下とのことで、私が目撃した人とは違うことが判明。
でも、当時の男の子は大なり小なり似たような経験をしていたんですね。

「707Jr行方不明の男」さんのお話は続きます。

「私は親の代から久我山に住んでいたので、久我山から自転車で友人たちとよく井の頭公園で遊んでいました。公園駅の神田川の横の下水道に入ったり(危険)、今は無いようですが駅横のはらっぱでUコン飛行機で遊んだりしていました。

当時の事を思い起こせば、サブマリン707ジュニアはC級のモーター駆動でたしか豆電灯もついていました。内パッキン(防水ゴム)を取り付け組み立てました。興味本位(風呂やにすればよかったのに)でその後井の頭公園の浮島小池に持ち込み、魚雷船で遊んでいた年上(中学生位)の人たちと合流し池で始動してもらいそのまま、浮上しなかったと思います。

それからは潜水系ではなく船系を購入した記憶も在ります。かつて憧れた、なつかしの模型屋さんにまたいってみようと思います。」

井の頭公園池でサブマリン707Jr行方不明の男

 

なお、 サブマリン707ジュニアに関しては、友人のK君(この時はまだ出会っていない)も同様の証言をしています。

 


「サブマリン707ジュニアは俺も作ったぞ。ギア駆動のフィンが動いて浮沈を繰り返すはずだったのが、メインのスクリューが陳腐な出来で、まるきっりスピードが出ない。ゆえに自動浮沈などやりようもなく、しかもゴムパッキンが不完全で、君が見たように見事に沈んで行くのだ!!」


 ・・んーやっぱり。707ジュニアは子供には難しいプラモだったかもしれませんね。ちゃんとした工作技術がある今ならうまく行くかもしれませんが。