模型墓場 井の頭公園  
井の頭公園は、艦船プラモの社交場
中学の途中まですごした吉祥寺の家は、井の頭公園までそう遠くない距離にありました。井の頭公園には池があり、ボートで遊ぶ家族連れなどでにぎわっていましたが、その水が最後に用水路に注ぐところは小さな池になっており、ここにはアベックのボートも入ってきません。水深も比較的浅く、仲間でプラモのボートや戦艦大和を遊ばせるには最適の場所でした。

休みともなるとどこからともなく人が集まり、ボートや潜水艦で遊んでいました。時には大人も大きな船を持ってきました。一回とてつもなく大きな大和を見たことがありますが、あれはどのくらいのスケールだったのでしょう。子供の時は今とは体の大きさが違いますが、どう見ても250〜200分の1くらいはあったような気がします。もちろん日模が1/200の大和を出す前の話です。

ここではゴム動力の潜水艦でも遊びましたが、やはり面白いのはモーターライズです。舵をやや曲げて池の岸からスタート、船は大きな弧を描き、離れた岸に戻ってきます。また、潜水艦の場合はさらにスリルがありました。やや濁った池ですから、自動浮沈装置が効いていったん水中にもぐると姿が隠れます。数秒後にかなり離れたところでぽっかりと浮上し、またしばらく走行後姿を消すのです。

日東化学教材のPT−109(ケネディー)・・・昭和40年ごろ製作
当時最も人気があったモデルは故ケネディー大統領が乗っていたというPT-109。いろいろなメーカーからキット化されていましたね。その中の一つ、日東科学教材鰍フモデルをご紹介しましょう(当時の雑誌広告より)

全長277mmは小学生の感覚では、かなりの大型モデルで、画像では判りにくいものの、きちんと1/85と表現されています。

価格は150円、当時子供が気軽に買えた100円のものよりやや大型であるところが特徴です。ちなみに写真は本体の下に水中モーターのような推進装置「マリントレーラー」をつけたセットで、価格は250円です。

この「マリントレーラー」、防水は考えられておらず、モーターも電池もそのままそのまま水に浸かるところが、やや残念です。

私の買ったのはモーター内臓の普通のタイプでしたが、走らせてみるとあまりスピードが出ないのが意外でした(同時に買った友人のものも遅かったから、私の作り方のせいではないと思います)。

  • やや大型である。
  • スクリューの形状にやや工夫がなく、他社のものに比べて推進力に乏しい(2枚スクリューのLSは速かった)。
  • 右の組み立て説明書でもわかるが、船底が山形にえぐられていて、スクリューが収まる。スクリューが十分水の流れを捕まえられない。

あたりが理由なのではないかと思います。

今も池の底に沈んでいるか?・・PT−109

さて、このキットの運命ははかないものでした。井の頭公園の池の岸をスタートしたPT−109は、なぜか池の中央で大きな円を描いて回り始めます。

もう手が届く距離ではなく、黙って見つめるしかありません。5分ほど経つと徐々に喫水線が下がり始め、いよいよ沈没が近づきます。

もちろん回りの観衆もかたずを飲んで(わくわくして)その時を待ちます。

やがて109のスピードは極端に遅くなり、次の瞬間、音もなく水中に消え、後に「すっ」と波紋が広がっていきました。

 

私が沈没させた艦船モデルは他にもありましたが、それは井の頭公園で遊ぶ宿命とも言えました。

池の中央でくるくる回る大和。波を起こして進行方向を変えようと石を投げたところ、きれいに直撃、轟沈させたこともあります(涙)。きっとあの池の底には今でも何百隻もの艦船プラモが眠っているはずです。合掌。

 

(上の写真の「707ジュニア沈没地点」に関しての記述は次のページをご覧ください)

おそらくこれが轟沈した大和