オデッセイ その1  下加工

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今回の工作ですが、最初は初心者からの脱却を目指す人向けに始めたものの、第三回目あたりから大きく方向性を変え、痛車工作に方針転換しています。ご了解ください。
 

毎回新しいキットを作る度に制作過程を説明しているのはなぜか。それはこのサイトを見ている人に何らかのヒントを提供できたらいいなと思っているからです。

その「工作机」も40回を超えてしまいましたが、ほとんどは自分の好きな車種を選び、苦労したところを中心に紹介しているものですから、「チュートリアル」としては中途半端。

そこで1年ほど前に「はじめてのカーモデル」というタイトルで、初心者さん向けに丁寧にまとめたページを作ったのですが、これがなかなか好評のようで、こことは別の場所で話題になっているのを見つけることがあります。とても嬉しいです。

そこで久しぶりにその続編みたいなのをまとめようと思いました。今度は初心者からの脱却を目指す人を意識し、若干突っ込んだ工作をしたいと思います。

塗装前ボディーの
仕上げ具合
ボディー塗装 内装などの
塗装
研ぎ出し ディテールアップ 工作時間の
目安
LEVEL1 パーティングラインの
除去のみ
缶スプレー 缶スプレーと
筆塗り
しない しない 10〜15時間
LEVEL2 気になる段差などの
整え
基本は缶スプレー エアブラシと
筆塗り
しない しない 20〜30時間
LEVEL3 うねうねの調整 缶スプレーか
エアブラシ
原則エアブラシ する 社外パーツの
取り付けもあり
30〜40時間
LEVEL4 気に入らない部分の
修正
缶スプレーか
エアブラシ
原則エアブラシ する 自作パーツの
組み込みもあり
40時間超

前回がLEVEL1とすれば、今回はLEVEL2ってイメージです(全ての工程が必ずそうとは言えないけど)。ちゃんとカーモデルを作ろうと思った人なら5台目くらい・・かな。

 

ネタはこれにしました。

何だかんだと言っても国産セダンやミニバンは作る人が多いだろうと思って買ってきました。

で、箱を開けて作り始めたのですが、このキットは・・・失敗でした。ものすごく出来が悪かったんです。

もともとアオシマに対しては作りの良さををそれほど期待していなかったのですが、最近作った痛車のこれこれについてはまあ合格ラインかなと評価していたので、それよりも設計が新しいキットがこれほど酷いとは予想外でした。

普段だったらできの悪さはむしろ歓迎なんです。直してより良くしていく楽しみがありまして・・・。だけど今回は違う。組立自体はサクサク進め、塗装などの説明にエネルギーの大部分を割くつもりでしたから、余計なことはしたくないんです。

でもこういうキットを作る人が実際多いとなると、そこの修正にも触れないわけには行かないでしょう。やはりこのまま進めます。ただし途中でブチ切れて方向転換しないとも限らないので、もしそうなったら許してね。

前置きが長くなりました。では始めます。

 

 

キットを開けたら、まずはボディーパーツを確認しましょう。

カーモデルは何と言ってもボディーの仕上がりが命。このキットの場合はバンパーやサイドステップが別パーツなので、まずはこれを当てはめてみます。

いきなりこれかよ・・・。
合わないじゃん。
リアも広がってるじゃん。何十年も前のキットじゃあるまいに。

アオシマの営業さんに言いたい。
あなたたちは自分でこのキットを作ったことがあるのか? 商品に自信と誇りを持って販売活動してるのか? ・・・と。

 

(気を取り直して)

えー、こういう場合はいくつか対策がございますので、慌てないようにしましょう。

 

修正の仕方はこうです。セロテープでちょっとテンションかけながら・・・、
熱いお湯に入れて・・・、
急冷します。

ただしこの方法にはリスクがあります。

プラモの素材は通常スチロール(ポリスチレン)と言う熱可塑(かそ)性の樹脂。常用耐熱温度は70〜90℃くらいなので、沸騰したお湯に入れれば大抵の場合ぐにゃぐにゃになると考えて良いでしょう。

実際は個々のキットによって成分も異なりますので、あるメーカーのあるキットは70℃で変形、別のメーカーのキットは90℃でも大丈夫と言うことも考えられます。このように失敗することもありますので、このような作業をする時は徐々にお湯の温度を上げたり、お湯に浸けている時間を増やしたりするなど、様子を見ながら慎重に行ってください。

ぴたっと行きました。

次に考えることはバンパーを今接着するか、最後の最後に接着するかです。

両者にはメリット、デメリットがあります。

・事前に接着のメリット・・・丈夫にくっつけられる。塗装が1回でできる。接着後に面を整えることで仕上がりが良くなる。

・後で接着のメリット・・・バンパー形状によっては研ぎ出しが楽。

今回は形から言って事前の方が良いかもね。

ここでちょっとした裏技です。

バンパーにプラ板を貼り付けてから接着すると、接着剤をつけるスペースが確保できて丈夫さも増しますよ。

さらに言えば、上のような修正をかけなくても、ちょっとした広がりなら抑え込めます。

接着後、このように削っていきますが、もうこれ以上は無理かなって所まで行ってもまだ完全に面が出ない場合は・・・、
瞬間接着剤で盛り上げて・・・、
平らな面を作りますが、溝が埋まってしまいますので、もう1回掘り込まないといけません。

ここで使っているのはハセガワの「エッチングソー(セット)」。
「線」で彫りますから、新たに溝を作る場合に線がよれにくいメリットがあります。

ちなみに「エッチングソー」は透明部品をランナーから切り取る際にも重宝します。ニッパーですとパキッと透明パーツにヒビが入る可能性があるものの、「エッチングソー」なら安心して切り離せますので、持っていて損はないです。

 

こんな感じになります。
ボディー全体を眺めます。

あちこちにある「パーティングライン」をペーパーで整えていくのは基本ですが、LEVEL2になりましたらボディー表面を見て不自然と感じた部分はさらに大胆に削り込んでも良いでしょう。

ボンネットとフェンダーの間の溝付近を見てください。

ちょっと「面」を出そうとしているのがお判りかと思います。

パネルとパネルの溝を少し深く彫り込むと、リアル感が増しますし、後で墨入れもしやすくなります。ご存知「スジ彫り」です。

溝を彫る工具としてはGSIクレオスの「Mr.ラインチゼル」やハセガワの「モデリングスクライバー」などがあります。お金に余裕があればそれらを買うのが一番です。

ただ私は、Pカッターを加工したものを使っています。

Pカッターはこういうものですが・・・、
刃の先端はこうですので、そのまま使うのはちょっと辛い。
私のはこう。

展示会仲間のKADさんのお手製です。

ただ、誰もが自分で加工できるわけではないので、紹介しても何にも役に立ちませんね。

「Mr.ラインチゼル」などを買うのが一番です。

そう言えばフロントバンパーを接着する前にやっていた加工がありました。

このキット、フロントグリルから奥を覗くとエンジンルームとの間の仕切りが見えてしまいます。今回はそこを抜いてしまいましょう。

ここで使うのが「ピンバイス」です。要するに小さなドリルですが、LEVEL2になりましたらこの道具はぜひ買ってください。

色々なところに使えますので。

こんな風にして・・・、
こうして、さらに切り口は彫刻刀や棒ヤスリで整えれば、短時間に確実な孔あけができます。
こうですね。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

さて皆様、ここで写真をよくご覧くださいませ。ボディーのサイドパネル(ドアの所)が不自然なくらい内側に絞り込まれていると思いませんか?

実車がこうなんだろうか?とも思いましたが・・・、
やはりこれは変。ボディーがゆがんでいるんですね。

試しにシャーシにはめてみますと、シャーシがボディーに干渉して無理矢理広がることになり、結果としてはオーライと言えなくもないのですが、そのひずみは絶対どこかに悪さをしていると考え、修正を加えることにします。

ボディーをシャーシにはめ、少し広げる意味でプラ板をはさみ、熱いお湯に浸けます。
直りました。
実車がこうで・・・、
修正前がこう。
修正後にはこうなりました。

実は今回のお題、最初は普通の「オデッセイ Absolute(アブソリュート)」にするつもりでした。ところが模型屋でそのキットを確認したらボディがねじれていたんです。
そこで急遽「オデッセイ NOBLESSE Worten」に変更したのですが、その結果がこれだもんね。店頭じゃこういったゆがみやバンパーの広がりまでは確認できませんわ。

(淡々と書いていますが、かなりむかついています)

今度は内装パーツがちゃんとボディー内に収まるかのチェックです。

このキットではドアの内張りがやや高い位置に来ることが確認できました。このまま作っていくと透明パーツを組み込んだ時にあちこちが干渉して全体がゆがんだりすることになりますので修正します。

修正の仕方はキットによって様々ですが、今回の場合は簡単でした。
そろそろシャーシにタイヤなどを仮止めしボディーをかぶせてみましょう。
前後のタイヤがかなり後ろに寄っていることが確認できました。

もう何が起きても驚きません。あ〜そうですかって心境。

シャーシとボディーの位置関係は合っていますので、原因はやはり足回りにあるようです。
このキットの足回りにはかなり自由度がありましたので、修正は簡単でした。

またホイールアーチのカーブも若干修正。

タイヤハウスの内側ですが、大抵のキットの場合、ここが厚くなっていますので、削ると良い感じになります。

タイヤもいわゆる「ツライチ」にしやすいですし。

この回のおさらいです。

・初心者の方はサクサク作れるキットを選ぶことが大事です。わからなければ模型屋さんや詳しい人に聞きましょう。
・でも何台か作ったあとは自分の作りたいキットを選びましょう。そのキットがひどい出来でも何とかしましょう。
・バンパーとボディーが別パーツの時、滑らかにつながるデザインのときはあらかじめ接着してから形を整える方がきれいな仕上がりになるでしょう。
・ボディーなどのゆがみはお湯で直すこともできます。ちょっとコツは必要ですが、ぜひマスターしてください。
・ピンバイスは様々に使える必須工具です。持っていないなら買いましょう。
・スジ彫り工具は持っていると良いですよ。
・タイヤとボディーの位置関係はとても大切なので、ずれていたら極力直しましょう。

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