バンダイ 1/16 イターラの制作 その1 可動部分の調整

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(2020/05/26)

今回作るのはこれ、バンダイの1/16イターラです。

なぜこれを?・・・理由は色々ありますが、順次説明していきます。

まずは中身を見ていきましょう。

「これはデラックスなキットでございます 」と言いたげなパッケージです。
パーツ構成はこんな感じ。多くもなく少なくもなくと言ったところです。
何種類もの金属ギアが入っています。

このキットの最大の魅力がここ。

1967の刻印。

ではこのキットは1967年にバンダイから発売されたものなのでしょうか。

違うんです。

もともとこれを設計開発したのは今はなき今井科学。バンダイブランドで発売されたのは1970年。

 
箱に入っていたチラシのラインナップを調べてみると、元が今井だったものは他にもいくつかあり、中には元がフジミのものすら存在していました。

ウィキペディア記事を引用すれば今井科学は、

・1954年、今井栄一が1948年に齋藤茂一と共に創業したフジミ模型教材社から独立して今井商店を設立

・1960年にプラモデルの製造に参入し、11月に電動歩行の鉄人28号を発売。以降、『鉄腕アトム』、『ビッグX』、『サブマリン707』などがヒット

・特に1966年に発売を開始した『サンダーバード』の関連キットは大ヒット

・だがその後『キャプテン・スカーレット』、『マイティジャック』が大コケ

・1969年に会社更生法の適用を受けて倒産。
静岡の工場と製品金型の多くがバンダイに売却され、1971年、これらの資産と人材を基にバンダイは従来の本社の模型部とは別に新たに子会社バンダイ模型を設立。
後のガンプラなどバンダイのプラモデル事業の基礎となる

・1971年に会社再建を果たした後も色々やっていたが2002年に営業を停止し、会社は解散

となっています。

イターラがバンダイから発売された1970年は今井倒産の翌年になります。話がつながります。

もし今井がコケなかったらバンダイも本気になってプラモをやっていなかったかもしれません。そう考えればイターラはプラモの歴史の中で重要な位置を占める証人。もしあなたがガンプラを楽しんでいて、今後どこかの展示会で私のイターラを見かけたら一礼して通り過ぎてください。

 

講釈が長くなりました。

ざっくりと組んでみます。

エンジン部はこれだけです。寂しいです。

 

ただしこのキットの最大の魅力は、モーターを回すとOHVエンジンのプッシュロッド(※)が上下する機構がついていること 。

この時代のエンジンはカムシャフトが二つに分かれているのが定番なので、プッシュロッドもシリンダの左右に配置されていますが、そのあたりも再現されてい ます。

※上の昭和プラモデル全リストには「ボンネットを外せばピストン・ファンの動きが見える」とありますが、ピストンが見えたら怖い

動きは動画で確認してください。滑らかに動くようにするための調整が大変でした。

 

またエンジンと プロペラシャフトはトランスミッション”的なもの”でつながっていて、床から生えたシフトレバー”的なもの”を動かすと走り出すんですね。

 

 

実はこのイターラ、私が高校生の時に柏崎模型好楽会のK君(中学 からの同級生)が作ったものを見てるんです。

(追記:本人から連絡があり、今井のものだったとのこと)

こりゃすごいと印象に残っていて、その後オオタキのトランザムを作った時に、同じようなクラッチ機構を自作したほどでした。

今回イターラを作ろうとする理由の一つは、50年前の感動をもう一度味わいたいからです。

右側に回ってみます。

ステアリング機構の歯車が見えます。

仕組みとしては素晴らしいんですが、歯車が丸見えですし、オーバースケール。

これではエンジン部をかっこよく作ってもぶち壊し。

 

そこで自作することにします。

使い捨てライターを分解して取り出したバネと・・・、

チョロQ”的な”おもちゃから取り出した極小歯車を組み合わせ・・・、
一回り小さいステアリングギアボックスを作ります。
こんな感じになって、ずいぶん見た目が良くなりました。
こんな風に動きます。
リーフスプリングは一か所三枚(※)の板を組み合わせるようになっています。

(※)本物は六枚

普通のスケールモデルですと一体成型でやってしまうかもしれませんが、わざわざこうしたのは、なぜリーフスプリングが複数の薄板でできているのかを伝えるためではないかと思われます。

動きを見ればその意味がわかるわけです。

模型とは現物(架空のものであっても)を模したものですが、外観を忠実に再現する方向に進むのか、その仕組みを再現するのかとなると、今のプラモはほとんど前者です。

でも私の子供の頃のプラモの多くはモーターライズでしたし、飛行機プラモも脚が引っ込んだりキャノピーが開閉したりエルロンやラダーが動く方が”格上”だった。

その分見た目はある程度我慢しなくてはなりませんが、”機械”のすごさを子供に伝えることも模型の役割の一つ。

このイターラがすごいのは、当時の精一杯の技術でそこにチャレンジしているってことですね。

 

仮組した外観イメージはこうなります。
やることはまだたくさんあります。

バンダイ 1/16 イターラの制作 その1 可動部分の調整

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