閑静な住宅街に佇む一件の家。その応接室にある問題を抱えたキットがありました。
物件No.13 古すぎるキット
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「ポルシェカレラ6」は
築約30年。もともとはLS家が設計したものでしたが、1990年ごろ不幸にもご主人の会社が倒産し、その後は有井家の所有となって現在に至っています。
約30年間、多くの模型好きを楽しませてくれたこのキットも今では老朽化が激しく、模型店では陽の光も届かない奥まった場所に追いやられる有り樣。
明るく樂しかった幼い頃の思い出はすっかり色あせてしまいました。
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それだけではありません。
長い年月とともに金型は傷つき、手にとる人の哀愁を誘います。
絶望感漂うバリ・・・・・。
すきま風のはいるウインドウ・・・・・。
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えくぼのような肉ひけ・・・・・。
遠い記憶のかなたに思い出される
第四回日本グランプリの興奮、生沢徹の活躍・・・、
輝かしかった高度成長時代の栄光を、懷かしい思い出と共に蘇らせ、再びこのキットに光を当てられたら・・・。
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そんな有井家の切なる願いを受け、一人の男が立上りました。
人が「改造の詐欺師」と呼ぶその男が模型作りにおいて最も得意とし、重視するのは「ウケねらい」。
金型のキズ、バリ、省略された部品、簡略化された説明書・・・、それら全てが匠の感性を刺戟し、豊で暖かな空間を創造する原動力となるのです。
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匠は早速キットの土台に目をやります。
ちょっと待って下さい! この違和感は・・。
なんということでしょう。
キットのボディーは有井家によって改装が加えられ、シャーシとの接合部が延長されているではありませんか。
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これでは完成時に接合部が丸見えになってしまいます。
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前途多難なカレラ6。匠は目を閉じて思索をめぐらせます。
おや? 匠は意を決したように立ち上がりました。先程の苦惱に滿ちた表情から一転、明るさを取り戻した匠。どうやら決心が固まったようです。
「LSの絶版キットをベースに作るしかない。」
失敗のできない大改修へ向け、匠は決心を新たにするのでした。
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