初めてのR/Cカー

 
電動士、タミヤのポルシェ934に出会う
電動士が初めて手にしたラジコンは、タミヤのポルシェ934です。それまでプラモオンリーの私でしたが、もともと動く模型が好きな私のこと、「プラモを自由に動かしてみられたら・・。」と言う単純な理由で、手軽なラジコンを求めに模型屋に行きました。そこにあったのが、発売されて間もないポルシェ934だったわけです。

学生だった私の収入はバイトも含めて月に6万円、ここから部屋代を払い、その外の出費(楽器維持費、レコード代、演奏会遠征費、衣装代など)もあって、毎月の収支はかつかつでした。

「どうせ買うなら、おもちゃなんかじゃなく、これをどう?」と店主に勧められた934、その値段たるや私には天文学的数字でした。

「キットが9.800円! プロポが、い、いちまんろくせんえん!!、しかもニッカド電池が一本1200円!!!・・。合計でさ、三万円!!!!」プラモの比ではありません。 

私が作った実物はもうありません。
これはクリヤマ模型様に保存されていたもの。

一度は引き返してきた私でしたが、なぜかあきらめきれない。何日か悩んだ挙句、ついに購入を決意することにしました。代金は確か3回ほどの分割にしてもらったと記憶しています。ニッカド電池にはとても手が回らず、まずは乾電池でスタートです。

組み立ては何の問題もありませんでした(ISOねじではなくJISねじが気になりましたが)。ボディーは後回しにして、とりあえずシャーシは完成。スイッチを入れてみます。スティックを動かすと、これに連動してサーボが回り、ステアリングやコントローラーが動きます。何とも不思議な感覚でした。部屋の中で車庫入れなどの真似事をした後、外に出てみました。この瞬間、私の長いラジコンとの付き合いが始まりました。

ニッカド電池とギヤ比の怪

最初どうしても理解できなかったのが乾電池とニッカド電池の違いです。説明書を見ると乾電池の時はカウンターギヤを介した2段階減速なのに、ニッカドの場合は減速は一段。なぜなのかがまったく判りませんでした。減速比を大きくすればトルク型になりますから、電池の持ちはよくなるだろうことは想像がつきましたが・・。試しに乾電池で一段減速にするとスピードが出るどころか、ただ電池が熱くなるだけでした。

「どうやらこれはニッカドを買うしかないようだ。」決心した私は電気店に単U型のニッカドを買いに行きました。だがラベルを見てびっくり。電圧が1.2Vと書いてあるではないですか。「1.5Vのニッカドはないんですか?」「そう言うものはありません。」・・・今となってはただのお笑いです。

ポルシェにニッカドを搭載し、走らせたときの驚きは今でもハッキリ覚えています。オームの法則電力=電圧×電流)を肌で理解した瞬間でした。でもそのときのパワーといえば、わずか4.8Vにマブチ360モーター(380sですらない)だったのです。

タイヤがすり減る感動
ニッカドが搭載され速く走れることがわかると、ラジコンは俄然楽しくなってきます(乾電池のときは車庫入れ位しか楽しめなかった)。当時私は大学生でしたが、私が楽しんでいるのを見て、更に二人の研究室仲間がラジコンに参加しました。一回の充電で、それでも20分くらいは走ったと記憶しています(大学院仲間の一人、マック佐藤茂樹君は今でも現役、エンジンカー中心に活躍しています)

ふとタイヤを見ると、角の所がささくれ立っているではありませんか。「おー、タイやが磨り減っている!」と感動したことを覚えています。今はすぐ減るタイヤで金銭的に苦しんでいると言うのに。

ライバル、大滝BMWの登場
さて、タミヤに続いてラジコンに参入してきたのは、やはり1/12のスケールモデルを持っていた大滝です。大滝のシャーシはタミヤによく似た(笑)ものでしたが、強力な380Sモーターの搭載、及びリアの車軸にボールベアリング採用という差別化を図ってきました。タミヤのポルシェが確か時速19kmと言っていたのに対し、大滝は時速23kmを誇りました。この言葉に誘惑され、けっこう大滝のユーザーは多かったように思います。

すぐさまタミヤもポルシェ935を登場させます。電池は6Vのパック仕様、コントローラーは抵抗式になりました。私も934を手放して935を購入、前後にベアリングを仕込んでスピードアップを狙います。工学部なので旋盤など工作機械には不自由しません。

ポルシェだけではあき足らず
われわれの仲間には大滝になびくものがいましたが、私はその他のプラモデル、例えばポルシェ910、あるいはフェアレディー240などを購入し、ボディーを利用する方向に走りました(クリアーボディーなどは眼中になかった)。934のシャーシはホイールベースが可変式ですが、トレッドはいかんともしがたいので、シャーシは自分で何とかしなくてはなりません。

またタイヤはスケールにこだわりますので、ホイルもキットのものを使えるよう加工しました。

このとき驚かされたのは、フェアレディー240Zです。ギヤ比などはあまり変わっていないのに、異常に直線が早いのです。おそらくボディーが軽かったこと、タイヤの幅が狭く抵抗が少なかったためでしょう。しかしコーナーは決して得意とは言えず、ラジコン作りの難しさを感じたものでした。